ネクタイの古いしみ染み抜きで色が抜けた？

2017年02月12日

ネクタイのしみ
ネクタイの古いしみを染み抜き修復させていただきました

シミを付けてあきらめてしまっていたようですが
時間が経過してもほとんどのしみは落とす事ができます

でも今回はちょっとした覚悟が必要でした

比較的安全な方法から染み抜きしていきます
漂白もします

漂白をしても黄ばみは残ってしまいました
漂白も色々と種類があるのですがさきほど言ったある覚悟とは
ネクタイの色も一緒に抜かなければならないということです

インクのしみは別物として、シミの中でも動物繊維に付いた黄ばみのしみはかなり慎重に行う必要があります
慎重というと曖昧ですね
生地の変化を集中して見ながら染み抜きをしていくという事です

最悪なのは黄ばみだけ残ってネクタイの色が抜けてしまうという事態
こうならないように、ネクタイの色は抜いても黄ばみを確実に落とせる方法を探ります

黄ばみはその種類としみが付着した生地によっても対処の方法が違ってきます
なんでもいいから試せばいいというわけではなく
生地を傷めないことが大前提なので、できるだけ早い段階で経験と感、知識、実際の反応などを立体的に考察し方法を探る必要があります

今回は肉を切らせて骨を裁つ方向へ
ネクタイの色抜け
ネクタイは色落ちしましたが、黄ばみもしっかり落とす事ができました
生地の損傷はありません

ここまでくればひと段落です
あとは得意の染色補正を施していきます
着物と同じシルクの生地に合わせた染料で少しづつ色を注していきます
ここをていねいに作業しないと今までの苦労は全てご破算です
色修正
どうでしょうか？
しみも消えて抜けた色もきれいに元通り

時間もかかります　リスクも負います　でも絶対にきれいにします
なので、染み抜きにお金がかかること、ご理解下さい

しみの範囲や生地の状態などを考慮すれば
場合によっては買いなおしたほうが良い場合もあるかもしれません

それでも大切にしたいネクタイ、思い出のつまったネクタイ
きれいに修復したい

そんな願いを叶えさせていただきます

ネクタイのシミは早ければ早いほど落とせる可能性は高くなりますし
生地の損傷のリスクも少なくなります

一度クリーニングして熱をかけてしまうと落ちにくくなるシミもあります
特にネクタイは食べこぼしのシミがほとんどですから
その可能性は高くなります

当店では染み抜きでお預かりしたものは真っ先に染み抜き作業に移します
落とせる可能性が高いうちに落としたいからです

洗ってしまって、温度をかけてしまったら繊維に染まりこんでしまったり
たんぱく質なんかは硬化してしまいます

例えばたまごの白身、生地に付いてしまったまま熱をかけたとします
繊維の中に白身が浸透したまま固まったらどうなるか
おそらく想像付くかと思います

もちろんシミの全てがそうなるわけではありませんが
ネクタイに付着するしみの特徴としてはそうなる可能性が高いわけです

で、ちなみにコーヒーのシミやワインのシミは色素系ですから
やはり温度がかかると落ちにくくなります

シルクに植物染を施した状態とお考え下さい
その染まった色を抜く作業が染み抜きです

ネクタイにしみを付けてしまった
まずご相談いただく際には、ネクタイのお色、どんなしみが付いたのか、シミがついてどれくらいたつのか
ご家庭で染み抜き処理をしたか？他店でクリーニング、もしくは染み抜きを依頼したか？
などできる限りの情報をいただけるとリスクが少なく染み抜きすることができます

ご相談いただく際にはご面倒でもそのあたりご協力くださると助かります
ま、でもあまり固く考えずお気軽にご相談下さい

分からなければそれでも大丈夫です！