2015年07月24日
バッグのシミ抜きです。おそらく水のシミ、もしくは何かが中から染みてしまったものだと思います。
これは染料で染められているため、本来ならシミ抜きできれいに落ちてくれればいいのですが、全く落ちませんでした。
こうなると同じ染料で塗装しても、シミを隠せません。
なので、特殊な顔料で塗装し柔らかな革の風合いを壊さないように意識しながら作業していきます。
今回の革の塗装は染料染めのムラ感を顔料で表現するため、薄く4層になっています。まず一番初めに下地を作り、そこに必要な色をエアーブラシで足していく。
そして僕のこだわりの一つ。極力シミの部分だけを塗装する。
バッグの底のシミも
もともとの染めのムラ感も出しています。
一般的に革バッグにシミがあった場合、その面は全塗装するみたいです。なぜなら、「ボカシ」の技術が必要なくなるから。
そして知り合いの板金塗装屋さんと話していたときにボカシという共通点を発見。きっとこの人バッグもイケるんじゃないかなぁ、笑 なんて思いながら。
あとは車と違う部分をクリアしていく。
下地が革だから、塗装でぬれている状態が長いとシミになる、染料の透明感を顔料で表現しないといけない。
これには長い時間かかりました。とにかく色々な要素がありすぎて。
革の塗装をする時が一番集中していますね。一つの品物が終わると頭痛くなるし肩こるし、笑
自分のものではなく、他人の大切なものをリスクを犯していじっている。その意識を長いときは5時間続けないといけない時があって。
だからお医者さんのように人の命を扱う仕事というのははたしてどれだけのプレッシャーとリスクを背負ってるんだろうと、きっと僕の想像の範囲を超えているんだろうなぁと..
家族の思いとかもあるし..すごいですよね、お医者さんて。
だから、それを思うと挑戦することへの勇気をもらえますね。
革って仕上げとか、なめしとか、革の種類とか塗装とかによって一つ一つ違うので、予期せぬ事態が起こることもあるんです。だからそれを今までの経験から想定の範囲内に収めていくことと
そうなった時の対処の方法とか手段を増やしていくことで、もっといい仕事ができるようになるんじゃないかなぁって思っています。
最近、靴修理と洋服のお直しを始めたことでシミ抜きに対しての考え方がすごく広がりました。
新しいことを始めるっていいものですね~
それから昨日はもう一つバッグの修復塗装
残念ながらビフォー写真を忘れてしまいました。
退色によって下半分が色落ちしていました。
こちらはシミのように顔料で吹きつけしなくても、足りない染料の色を足してあげる方法でなんとかなりました。
ほとんど分からないでしょ?染めのムラ感もきちんと出ていて。
これは仕事した本人もどこから日焼け退色していたのか思い出せないほどの仕上がりになりました。
足りない染料の色を足すというのはどういうことか、色は赤と青と黄色の3原色でできています。だから茶色のバッグが日焼けで色抜けして黄色っぽくなっていたら赤と青が退色しているんです。
それを微妙な調整で吹きつけながら足してあげることで修復します。
このカキ氷
溶けたらこうなります
グレーも3原色からできています。
よく小さい頃、絵の具を色々混ぜているとだんだんグレーになっていくのを経験したことないですか?
それと一緒です。
黒はその極みです。